記事一覧に戻る

インドの神様一覧 | ヨガに登場する神々・聖者ガイド

サンスクリット用語辞典 人物・流派・聖典の用語 Aug 23, 2026

サンスクリット用語辞典 > 人物・流派・聖典の用語

インドの神様は、ヨガの世界のいたるところに登場します。太陽礼拝は太陽神スーリヤへの礼拝に由来し、ハヌマーナーサナやナタラージャーサナなど多くのポーズ名は神々や聖者の物語から名づけられ、マントラの多くは神々への祈りの言葉です。このページでは、ヨガに関わりの深いインドの神様・聖者・神話の登場人物を、一覧でまとめて紹介します。

ヒンドゥー教の神々は「3億3千万の神がいる」と言われるほど多彩ですが、ヨガの実践で出会う名前はある程度決まっています。ここでは信仰をすすめるためではなく、ポーズ名やマントラの背景を理解するための文化の知識として、それぞれの神様が「何の神で、ヨガとどうつながっているか」を簡潔に解説します。名前のリンク先では、1柱ずつさらに詳しく解説しています。


三大神(トリムルティ)

ヒンドゥー教では、宇宙の「創造・維持・破壊」という3つの働きを、3柱の最高神に対応させて理解します。この三神一体の考え方をトリムルティと呼びます。

  • ブラフマー (Brahma) — 宇宙の創造を司る神。4つの顔で四方を見渡し、ヴェーダ(聖典)を生み出したとされます。妃は学問の女神サラスワティ
  • ヴィシュヌ (Vishnu) — 宇宙の維持を司る神。世界が危機に陥るたびに、さまざまな姿(アヴァターラ=化身)をとって地上に現れるとされます。クリシュナやラーマはヴィシュヌの化身です
  • シヴァ (Shiva) — 破壊と再生を司る神。ヨガの伝統では「最初のヨギー(アディヨギ)」つまりヨガの祖とされ、瞑想する姿で描かれます。ハタ・ヨガの伝統はシヴァを源流に持つと語られてきました

主要な女神(デーヴィー)

インドでは女神信仰が非常に盛んで、女性性の根源的な力はシャクティと総称されます。女神たちはそれぞれ独立した神格であると同時に、1つの大いなる女神のさまざまな顔としても理解されます。

  • サラスワティ (Saraswati) — 学問・芸術・音楽の女神。白い衣をまとい、ヴィーナという弦楽器を奏でる姿で描かれます。日本に伝わって弁才天(弁天様)になりました
  • ラクシュミー (Lakshmi) — 富・豊穣・幸運の女神。ヴィシュヌの妃。蓮の花の上に立ち、金貨を降らせる姿で描かれます。日本では吉祥天として伝わりました
  • パールヴァティー (Parvati) — シヴァの妃で、ヒマラヤ山の娘。愛と献身の女神であり、ガネーシャの母。穏やかな女神ですが、ドゥルガーやカーリーはその変身した姿ともされます
  • ドゥルガー (Durga) — 戦いの女神。神々が束になっても倒せなかった魔神マヒシャを討つために生まれ、ライオンにまたがり多くの腕に武器を持つ姿で描かれます
  • カーリー (Kali) — 時間と変容を司る、もっとも激しい姿の女神。黒い肌で舌を出した恐ろしい姿で描かれますが、信仰の中では「エゴを断ち切り、偽りを破壊してくれる母」として深く愛されています
  • シャクティ (Shakti) — 個別の女神というより、宇宙を動かす女性的なエネルギーの総称。クンダリーニの概念とも深く結びついています
  • シータ (Sita) — 『ラーマーヤナ』のヒロインで、ラーマの妃。貞節と忍耐の象徴とされます
  • ラーダー (Radha) — クリシュナの最愛の人。神への一途な愛の象徴で、バクティ(信愛のヨガ)の伝統では「魂が神を求める姿」の理想像とされます
  • ガンガー (Ganga) — ガンジス川を神格化した女神。天から流れ落ちる聖なる川で、その水はすべての罪を清めるとされます。聖地リシケシやバラナシはこの川のほとりにあります
  • アンナプールナ (Annapurna) — 食物と豊かさの女神。パールヴァティーの一面とされ、「食べ物に満ちた者」という名を持ちます。ヒマラヤのアンナプルナ峰の名の由来です

ヨガで出会う人気の神々

  • ガネーシャ (Ganesha) — 象の頭を持つ、インドでもっとも愛される神の1柱。障害を取り除く神であり、学問と始まりの神です。新しいことを始めるときに最初に祈りを捧げる対象で、「オーム・ガム・ガナパタイェー・ナマハ」のマントラでも知られます。シヴァとパールヴァティーの息子
  • ハヌマーン (Hanuman) — 猿の姿をした神で、ラーマへの献身と勇気の象徴。海を一跳びでランカ島へ渡った物語から、前後開脚のハヌマーナーサナ(猿神のポーズ)が名づけられました
  • カールッティケーヤ (Kartikeya) — 軍神で、シヴァとパールヴァティーの息子、ガネーシャの兄弟。スカンダ、ムルガンとも呼ばれ、スカンダーサナ(横への深いランジ)の名の由来です
  • ナタラージャ (Nataraja) — 「踊りの王」を意味する、宇宙の創造と破壊のダンスを踊るシヴァの姿。炎の輪の中で踊る像は、インド美術のもっとも有名なモチーフの1つです。片脚で立って後ろの足をつかむナタラージャーサナ(踊り神のポーズ)の由来です
  • アルダナーリーシュヴァラ (Ardhanarishvara) — 体の右半分がシヴァ(男性性)、左半分がパールヴァティー(女性性)という半身半女の姿。相反するものの統合というヨガの中心思想を象徴し、同名のポーズもあります
  • バイラヴァ (Bhairava) — シヴァの恐ろしい憤怒の姿。「畏怖すべき者」を意味し、カーラ・バイラヴァーサナなどのポーズ名に登場します

ヴィシュヌの十化身(ダシャーヴァターラ)

維持神ヴィシュヌは、世界が危機に陥るたびに姿を変えて地上に降りてくるとされます。代表的な10の化身をダシャーヴァターラ(10のアヴァターラ)と呼びます。魚から人へ、そして未来へと続く順番で数えられます。

  • マツヤ (Matsya) — 魚の化身。大洪水から人類の祖マヌと聖典を救いました。魚のポーズ(マツヤーサナ)の名の由来とされます
  • クルマ (Kurma) — 亀の化身。神々が不死の霊薬アムリタを得るために海をかき混ぜたとき、その土台として山を背中で支えました。亀のポーズ(クールマーサナ)の由来です
  • ヴァラーハ (Varaha) — 猪の化身。海に沈められた大地の女神を、牙にかけて引き上げました
  • ナラシンハ (Narasimha) — 人獅子の化身。「人にも獣にも殺されない」という魔王の不死の条件をすり抜けるため、半人半獅子の姿で現れました
  • ヴァーマナ (Vamana) — 矮人(小人)の化身。「三歩分の土地」を願い出て、巨大化して三歩で全宇宙を測り取りました
  • パラシュラーマ (Parashurama) — 斧を持つ戦士の化身。「斧のラーマ」を意味します
  • ラーマ (Rama) — 『ラーマーヤナ』の主人公である理想の王。さらわれた妃シータを、ハヌマーンたちの助けを得て取り戻す物語は、インドでもっとも愛される叙事詩です
  • クリシュナ (Krishna) — 『バガヴァッド・ギーター』で戦士アルジュナにヨガの教えを説いた導き手。青い肌で笛を吹く牛飼いの姿でも描かれ、バクティ(信愛)の伝統の中心にいる神です
  • ブッダ (Buddha) — 仏教の開祖。ヒンドゥー教の伝統では、ヴィシュヌの化身の1人に数えられることがあります
  • カルキ (Kalki) — 未来に現れるとされる最後の化身。白馬に乗り、現在の時代(カリ・ユガ)の終わりに現れると語られます

ヴェーダの神々

ヨガの源流であるヴェーダの時代(数千年前)には、自然の力を神格化した神々が中心でした。後の時代に主役はトリムルティに移りましたが、ヴェーダの神々の名前はヨガの用語の中に今も生きています。

  • スーリヤ (Surya) — 太陽神。7頭の馬が引く戦車で天空を駆けます。ヨガでもっとも有名な一連の動きである太陽礼拝(スーリヤ・ナマスカーラ)は、この神への礼拝に由来します
  • チャンドラ (Chandra) — 月の神。太陽(ハ)と月(タ)の統合がハタ・ヨガの語義の1つとされるように、月は静けさと陰の質の象徴です。片鼻呼吸のチャンドラ・ベーダナ(月の呼吸)にも名が残ります
  • インドラ (Indra) — 雷を操る神々の王。ヴェーダ時代の最高神で、日本には帝釈天として伝わりました
  • アグニ (Agni) — 火の神。儀式の炎そのものであり、ヨガでは消化の火・変容の力の象徴として今も頻繁に登場します
  • ヴァーユ (Vayu) — 風の神。ハヌマーンの父ともされます。ヨガでは体内の気流(プラーナ・ヴァーユ)の名前として生きています
  • ヤマ (Yama) — 死と正義の神。最初に死を経験した存在として死者の国を治めます。日本の閻魔大王の起源です。なお『ヨーガ・スートラ』の八支則の第1段階「ヤマ(禁戒)」は同じ綴りの別の言葉で、「制御」を意味します
  • ヴァルナ (Varuna) — 水と天の秩序を司る神。ヴェーダ時代には宇宙の法(リタ)の守護者でした
  • ソーマ (Soma) — 神々に力を与える聖なる飲み物を神格化した神。月とも同一視されます

太陽礼拝の12のマントラに対応する太陽の名前

太陽礼拝(スーリヤ・ナマスカーラ)の伝統的な実践では、12の動きの1つひとつに、太陽神の12の名前を唱えるマントラが対応しています。それぞれの名前は、太陽の異なる側面をたたえるものです。「オーム・(名前)・ナマハ」の形で唱えられます。

  • ミトラ (Mitra) — 「万物の友」。オーム・ミトラーヤ・ナマハ
  • ラヴィ (Ravi) — 「輝く者」。オーム・ラヴァイェー・ナマハ
  • スーリヤ (Surya) — 「活動を促す者」。オーム・スーリヤーヤ・ナマハ
  • バーヌ (Bhanu) — 「光で照らす者」。オーム・バーナヴェー・ナマハ
  • カガ (Khaga) — 「天空を行く者」。オーム・カガーヤ・ナマハ
  • プーシャン (Pushan) — 「養い育てる者」。オーム・プーシュネー・ナマハ
  • ヒラニヤガルバ (Hiranyagarbha) — 「黄金の胎蔵」。宇宙の種を宿す黄金の卵を意味し、ヨガの伝統では「ヨガの最初の伝授者」の名としても語られます。オーム・ヒラニヤガルバーヤ・ナマハ
  • マリーチ (Marichi) — 「光線を持つ者」。聖者マリーチと同じ名前です。オーム・マリーチャイェー・ナマハ
  • アーディティヤ (Aditya) — 「無限の母アディティの子」。オーム・アーディティヤーヤ・ナマハ
  • サヴィトリ (Savitr) — 「目覚めさせる者」。ガヤトリー・マントラで祈りを捧げる対象も、このサヴィトリです。オーム・サヴィトレー・ナマハ
  • アルカ (Arka) — 「賛美されるべき者」。オーム・アルカーヤ・ナマハ
  • バースカラ (Bhaskara) — 「光をもたらし悟りへ導く者」。オーム・バースカラーヤ・ナマハ

ポーズ名になった聖者・英雄

ヨガのポーズには、神話や伝説の聖者(リシ)の名前を持つものが数多くあります。ポーズ名の由来を知ると、形の意味が物語として記憶に残ります。

  • パタンジャリ (Patanjali) — 『ヨーガ・スートラ』を編纂したとされる聖者。ヨガ哲学の父とも呼ばれ、半人半蛇の姿で描かれる伝承もあります
  • ヴィラバドラ (Virabhadra) — シヴァの怒りから生まれた戦士。戦士のポーズ1・2・3(ヴィラバドラーサナ)はこの英雄の物語の3場面を表しています
  • マツィエンドラ (Matsyendra) — ハタ・ヨガの祖とされる伝説的な行者。魚の腹の中でシヴァのヨガの教えを聞いたと伝えられます。ねじりの代表ポーズ、アルダ・マツィエンドラーサナ(半分の魚の王のポーズ)の由来です
  • ゴーラクシャ (Goraksha) — マツィエンドラの弟子で、ハタ・ヨガを体系化したナート派の祖。ゴーラクシャーサナの由来です
  • マリーチ (Marichi) — 創造神ブラフマーの心から生まれた聖者の1人で、名前は「光線」を意味します。座位のねじりのマリーチャーサナ1〜4の由来です
  • ヴァシシュタ (Vasistha) — 七聖仙の1人に数えられる偉大な聖者。横向きの板のポーズ、ヴァシシュターサナの由来です
  • ヴィシュヴァーミトラ (Vishvamitra) — 王でありながら苦行によって聖者の位に達した人物。ヴァシシュタとの確執の物語で知られます。難度の高いヴィシュヴァーミトラーサナの由来です
  • アシュタヴァクラ (Ashtavakra) — 生まれつき体が8か所曲がっていた聖者。外見で人を判断した王を智慧で諭した物語で知られ、アームバランスのアシュタヴァクラーサナの由来です
  • バラドヴァージャ (Bharadvaja) — 七聖仙の1人。座位のねじり、バラドヴァージャーサナの由来です
  • カウンディンニャ (Koundinya) — 学識で知られる聖者。ねじりを伴うアームバランス、エーカパーダ・カウンディンニャーサナの由来です
  • ガラヴァ (Galava) — ヴィシュヴァーミトラの弟子である聖者。アームバランスのガラヴァーサナ(フライングピジョン)の由来です
  • カシュヤパ (Kasyapa) — マリーチの息子で、多くの神々と生き物の父とされる聖仙。カシュヤパーサナの由来です
  • ドゥルヴァーサ (Durvasa) — 怒りっぽいことで知られる聖者。片脚を首にかけて立つ難度の高いドゥルヴァーサーサナの由来です
  • ヴァータヤナ (Vatayana) — 馬の顔を持つとされる聖者。馬のポーズ(ヴァータヤナーサナ)の由来です
  • カピラ (Kapila) — ヨガ哲学の土台となったサーンキヤ哲学の開祖とされる聖者

神話の生き物・神々の乗り物

神々はそれぞれ専用の乗り物(ヴァーハナ)を持ち、これらの生き物も神話の重要な登場者です。

  • ガルーダ (Garuda) — ヴィシュヌの乗り物である聖なる鷲(霊鳥)。蛇族ナーガの天敵で、インドネシアの国章や航空会社の名前にもなっています。腕と脚を絡める鷲のポーズ(ガルーダーサナ)の由来です
  • アナンタ (Ananta) — 「無限」を意味する千の頭を持つ大蛇で、シェーシャとも呼ばれます。ヴィシュヌはこの蛇の上に横たわって休みます。横たわって脚を上げるアナンターサナの由来です
  • ナーガ (Naga) — 蛇の姿をした半神の一族。水と大地の豊穣を守る存在とされ、コブラのポーズ(ブジャンガーサナ)など蛇にちなむポーズの背景にいます
  • ナンディン (Nandi) — シヴァの乗り物である白い牡牛。シヴァ寺院の入口には必ずナンディン像が置かれ、主を一心に見つめています
  • マカラ (Makara) — ワニに似た水の怪魚。ガンガーの乗り物で、マカラーサナ(ワニのポーズ)の由来です

叙事詩の登場人物

二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』の登場人物たちも、ヨガの学びによく登場します。

  • アルジュナ (Arjuna) — 『マハーバーラタ』の英雄で、『バガヴァッド・ギーター』の主人公。戦いを前に苦悩する彼にクリシュナが説いた教えが、ギーターのヨガの教えです。「迷い悩む私たち自身」を代表する存在と言えます
  • カルナ (Karna) — 『マハーバーラタ』の悲劇の英雄。太陽神スーリヤの息子でありながら、出自ゆえの困難を背負って戦いました
  • ラーヴァナ (Ravana) — 『ラーマーヤナ』の魔王。10の頭を持ち、シータをさらってラーマと戦いました。悪役ですが偉大な学者・シヴァ信仰者でもあったという、単純な悪に収まらない描かれ方をします
  • マーラ (Mara) — ブッダの悟りを妨げようとした魔。仏教の登場者ですが、「心の迷いの擬人化」としてヨガ・瞑想の文脈でも語られます

インドの神様に関するよくある質問

ヨガをするのにインドの神様を信仰する必要はありますか?
ありません。現代のヨガは宗教の実践ではなく、信仰を持たない人にも開かれています。ただ、ポーズ名やマントラの多くは神話に由来するため、背景を知っていると練習の理解と楽しみが深まります。

ヒンドゥー教の神様で一番えらいのは誰ですか?
1つの答えはありません。ヒンドゥー教には多くの宗派があり、シヴァを最高神とする伝統、ヴィシュヌを最高神とする伝統、女神(シャクティ)を最高とする伝統が並立しています。多くの信者は、すべての神々を1つの究極の実在(ブラフマン)のさまざまな現れとして理解しています。

ヨガのポーズ名にはなぜ神様や聖者の名前が付いているのですか?
ポーズの形が神話の場面を表していたり、聖者に捧げる意味が込められていたりするためです。たとえばハヌマーナーサナの前後開脚は、ハヌマーンが海を一跳びで越えた大跳躍を表しています。名前の物語を知ると、形の意味が記憶に残りやすくなります。